ロシアの卵かけ幼女(下痢気味)

ブーン系とか、小説とか、いっぱい書きたいです。

スポンサーサイト

--------
スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

( ^ω^)ブーンに限らず復讐するようです 第01話

2010-03-21
かぎふく
124 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 22:27:07.48 ID:qeyJIutV0
第01話 そして復讐は始まった



殺す。

「――――」

斃す。
屠る。

「ハァ、ハァ――……!」

殺害する。
殺傷する。

「――――」

切り殺す。
刺し殺す。
絞め殺す。
撃ち殺す。
焼き殺す。

「ち、ちくしょう、ハァ……ハァ……どうして、どうして――!」

ありとあらゆる方法を以って、他者の命を奪う。

「――――」

それが、彼らの役目だった。


126 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 22:34:52.06 ID:qeyJIutV0
理由など関係ない。
そもそもそんなものは持ち得ない。
強いて挙げるとするならば、それは『必要なこと』だからだろう。

必要だから、殺す。
誰にとって必要なのか、などということは――やはり関係なかった。

(;’e’)「くそっ……くそぉっ」

薄黒い雲が浮かぶ夜天の下。
建物と建物の間、その更に奥まった裏路地で、遂に男は足を止めた。

雨。
水滴が地面を叩いている。
その中で大きく肩を上下させ、男は背後を見た。

憔悴と疲労が溜まりに溜まり、もはや走る気力を失ったのか。
これ以上逃げても無駄だと本能的に悟ったのか。
それとも別の理由があるのか。


……まぁ、どれでも構わねぇけど。


その余裕を体現するように、暗闇の奥から人影が現れる。

128 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 22:42:11.37 ID:qeyJIutV0
  _
( -∀-)「――――」

金髪の青年。
この雨の中、彼は傘も差さずそこにいた。

黒のコートを羽織り、ゆったりと近付いてくる様は無防備。
殴りかかればあっさり倒れてくれるのではないかと思えるほど、身体に力が入っていない。
しかし、

(;’e’)「……!」

逃げ惑っていた男は直感していた。
この男は自分にとっての死神なのだ、と。
そしてその刃は、もはや振り被られているのだ、と。

男は知っている。
青年の素性と、その恐ろしさを。

(;’e’)「な、何故……どうして私が『兵騎』に追われる……!?」
  _
( ゚∀゚)「……自分の胸に聞いてくれよ」

言いつつ、青年は頭の中で情報を展開する。

この怯えている男の名はセントジョーンズ。
政府企業『AeRaNi(エーラニ)』・研究開発部門に所属する職員だ。
研究プラントからの叩き上げで、それを含めてどこにでもいるような研究員の一人とも言える。

131 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 22:45:25.61 ID:qeyJIutV0
同じ組織に属している青年とは、いわば味方同士の関係にあった。
もっとも、それが通じるのは昨夜までの話なのだが。

(;’e’)「くっ……う、ぅ……!」

ここ最近では珍しくなくなってきたことだが、彼は組織を裏切った。
機密情報を持って他の組織に身を移そうと企み、その第一歩を踏み出したのだ。
今では、どこかから情報が漏れ、こうして追われる身となっているのだが。

追う側となっているのは当然、セントジョーンズの裏切り行為を看破したエーラニだ。

政府企業『AeRaNi(エーラニ)』。
過去の厄災から逃れた人々は、この地に集まり、この『VIP』という都市を作り上げる。
その形成の大部分を担ったのが、現在のエーラニと呼ばれる組織である。

元はどこかの大企業――FDだかFCだか、そういう名前だったと記憶している――らしいのだが、
彼らは潤沢な資金と人脈、技術を用い、疲れ切った人々の心を掴み、主導者となっていった。

居住区としての地下開拓。
VIP周囲にある四つのプラントの建造。
規則や治安を守るための私兵派遣。

やがてエーラニは経済、産業、政治などのあらゆる面における中枢になっていった。
それらが功を奏し、今やVIPは、確認されている限りの地上で唯一の楽園というわけだった。

そしてセントジョーンズは、その楽園に仇なそうとした。
楽園とは一言で言うが、その運営にまったくの問題がないわけではないので、
こちらからは解らないような何かしらの不満があったのかもしれない。

132 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 22:49:01.15 ID:qeyJIutV0
  _
( ゚∀゚)(けど――)

そんなことは関係なかった。
定めたルールを破る者がいれば罰を受けるのは当然である。
今回のセントジョーンズの行動は、死に値する重大な裏切り行為だった。
  _
( ゚∀゚)「抵抗は無駄だ。 大人しくしてくれ」

(;’e’)「――っ!」

セントジョーンズの目つきが変わる。
死を目前にして、生を求める本能が覚醒しようとしている。
だから、ジョルジュは重ねて言った。
  _
( ゚∀゚)「やめとけ」

雨の中でも通るように、しっかりとした口調で告げる。

こればかりは確実に伝えておかねば、と。
相手のためにも、自分のためにも。
  _
( ゚∀゚)「やめておけ。 無駄だ。 本当に無駄なことだ。 絶対に意味がないことだ」

だから、
  _
( -∀-)「……命を諦めてくれ」

134 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 22:51:14.13 ID:qeyJIutV0
決して。
決して、彼の本能を励起させる意図があったわけではない。
本当に心から、諦めてほしいと思ったが故の言葉だった。

(;’e’)「わ、私は……私はまだ死にたくない……」

しかし、セントジョーズの右腕が動いてしまう。
それは懐へ伸び、何かを取り出そうとする動作。
対してジョルジュは、まったく動くことなくその全てを見つめていた。

そして、

(;’e’)「死――……っぐ!!?」

取り出されたのは拳銃だった。
だがその銃口がジョルジュへ向く前に、既に動作が始まっていた。

一瞬である。
その間を以って、ジョルジュはセントジョーンズの背後に回り込んでいた。
拳銃を握った右腕を捻り上げ、膝の裏を蹴り飛ばし、そのままうつ伏せにさせる。

懐から取り出したワイヤーを使い、手足を固定。
抵抗の動きを見せたセントジョーンズは、わずか数秒の間に身動きを完全に封じられた。

あまりに早い捕縛。

しかし兵騎としては当然の結果だ。
専用の訓練を積んだジョルジュにとって、もはや朝飯前の動きである。

136 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 22:53:37.97 ID:qeyJIutV0
(;’e’)「ぐっ、うぅ……!?」
  _
( ゚∀゚)「…………」

もはや言葉は要らない。
セントジョーンズの選択を受け、ジョルジュも相応の答えを出しただけだ。

『――よぉ、お疲れさんだよぅ』

ジョルジュの右耳にあるイヤホンから、ノイズ混じりの声が来た。
  _
( ゚∀゚)「対象の捕捉、追跡、捕縛に至るまで全て問題なし。
     途中、抵抗する動きが見られましたが、これも問題なく制圧しました」

『OK、見てたぜぇ。 相変わらず見事なもんさ。
 ……で、後はいつも通りで良いかい?』

問いかけに、ジョルジュは身動きを封じられたセントジョーンズを見下ろす。
恐怖か憤慨かに震える後姿から、しかし逃げるように視線を外し、
  _
( ゚∀゚)「えぇ、お願いします」

『じゃあ、あとは任せなよぅ。
 お前さんはミセリ達と合流後、所定のルートで撤退しなぁ』
  _
( ゚∀゚)「了解」

137 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 22:55:56.78 ID:qeyJIutV0
通信が切れる。
再び雨音が耳を覆った。
その中で、ジョルジュはセントジョーンズを見下ろす。

(#’e’)「――ッ」

憎悪。
彼の目には、それがありありと浮かんでいた。
もし視線に形があれば、ジョルジュはその目を貫かれていただろう。
  _
( -∀-)「……恨めよ。 それが正しい」

吐き捨てるように言い残し、歩き始める。

雨の中、嗚咽のような声が聞こえてきた気がしたが、振り返ることはなかった。

139 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 22:58:13.78 ID:qeyJIutV0
『――君に一つ仕事を頼みたい』

『――――』

『解っている。 これは正式なものではない。
 君を……そうだな、包み隠さず言うなら「試す」ものだと思っていい。
 こちらとしても、意思も何も解らない者を迎え入れる気はないのでね』

『――――』

『肯定、と受け取ろう。 詳細を記したメールを送る。
 その通りに動いてくれれば、それで良い。 あとは我々が判断する』

『――――』

『あぁ、それと……解っているとは思うが、
 この任務を実行すれば、もはや君はどこにも戻れなくなるだろう。
 それを踏まえて、実行の是非を選んでくれ』

『――――』

『……意思は堅い、か。
 ならば期待させてもらおう。 我らの意思に並び立つ資格があるのか、を。
 願わくば、共に悲願の成就を――……』

『――――』

140 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:00:35.20 ID:qeyJIutV0
意思の入っていない目で、ジョルジュはそれを眺めていた。
  _
( ゚∀゚)「…………」

壁に備え付けられたディスプレイ。
深夜に近い時間帯の今、淡々とニュース映像が流れている。

新商品の話題。
エーラニへの就職を勧める旨の話題。
外界探査隊からの報告内容。
明日の天気と、汚染大気濃度の詳細。

一人の人間が死亡したことなど、当然のように語られない。
  _
( -∀-)「…………」

同じような話題を提供し続けるニュースに飽きたのか、ジョルジュは視線を外して周りを見る。

広い部屋だった。
両サイドに並ぶロッカーの群は、ジョルジュを見ていない。
中央にはベンチがいくつかあり、そこが何かの控室、または準備室だということを示していた。

ディスプレイの前に立っていたジョルジュは、無造作に置いてあるベンチに腰掛ける。
そして、深い溜息を一つ。
  _
( ゚∀゚)「……ふぅ」

ほんの数時間も前に人が殺されたとは、どうしても思えない穏やかさだった。

141 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:02:44.57 ID:qeyJIutV0
感覚が麻痺している。
最近のジョルジュは、それを自覚していた。
あのような殺人のサポートをするのは、今日が初めてではないのだ。

もちろん望んでやっていることではない。
しかしそうも言っていられないのが、この都市の現状であった。
  _
( ゚∀゚)「……?」

と、人の気配を感じて顔を上げる。
すると自動開きのドアが音もなく開き、

(=゚ω゚)ノ「よぅ、ここにいたんかよぅ」

煙草をくわえた小柄な中年が、頭を無造作に掻きつつ入ってきた。

(=゚ω゚)ノ「セントジョーンズの死体は処理完了ってよぅ。
     処理班も大変だが……ま、お前も御苦労様だよなぁ」
  _
( ゚∀゚)「いえ、イヨウさんこそお疲れ様です」

イヨウは、今のジョルジュにとって直接の上司にあたる人物だ。
チームを組まされた時、彼のアバウトさに不安を覚えたものだが、
いくつかの任務を経て、今では頼れる上司として認識させてもらっている。

144 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:04:58.43 ID:qeyJIutV0
彼は煙草をふかしながら笑みを浮かべ、

(=゚ω゚)ノ「俺っちはもう慣れたもんさ。 何年この仕事やってると思ってんだよぅ。
     あ、でもそろそろ歳っつーのを感じるようにはなったなぁ。
     特に今日は雨の中ずっと寝そべってたから、やたらと腰が冷えていけねぇよぅ」
  _
( ゚∀゚)「はは」

(=゚ω゚)ノ「ま、そういうわけだ。 あとは報告書作って仕事は終わり。
     次の仕事があるまで待機だよぅ」

話はそれだけなのだろう。
手をひらひらと振って出て行こうとするイヨウに、
  _
( ゚∀゚)「あの、イヨウさん」

(=゚ω゚)ノ「んお?」
  _
( ゚∀゚)「次も……こういう任務なんでしょうか?」

(=゚ω゚)ノ「へ?」

言ってから、自分がどんな愚問をしたのかに気付いた。
慌てて謝ろうとしたが、それよりも少し早くイヨウが答える。

(=゚ω゚)ノ「ま、状況が状況だからなぁ。
     『ナドラ』っつったっけ? そいつらと決着がつかねー限りは、なぁ?」

147 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:07:05.25 ID:qeyJIutV0
  _
( ゚∀゚)「…………」

(=゚ω゚)ノ「人を傷付けることを拒む兵騎、か。
     そういうの俺っちは嫌いじゃねーが、時期が悪かったとしか言いようがねぇ。
     気の毒だとは思うが……」

頷き、

(=゚ω゚)ノ「まぁ、執行は俺っちに任せておけよぅ。
     お前さんはこれまで通り、囮や追跡に頑張ってくれりゃそれでいい」
  _
( ゚∀゚)「……了解です」

(=゚ω゚)ノ「おう。 じゃーな」

一人取り残されるジョルジュ。
その表情は、しかし先ほどと同じで晴れることはない。

間接的にとはいえ、殺人に関与しているのだ。
以前のジョルジュからすれば考えられないことである。
もちろんイヨウが言ったように、今でも人を傷つけることはしたくないのだが、
  _
( ゚∀゚)(現状、とてもそう言ってられねぇ……。
     思えばあの日が、皮肉にも境になってたんだよな)

あの日。
二人が巻き込まれた事故があった日。

その日を境として、情勢は大きく様変わりした。

148 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:09:19.54 ID:qeyJIutV0
完璧と言える手腕で、人々の支柱となっていた政府企業エーラニ。
どんな思想家が声を荒げても、どんなテロリストが武力行使しても、それは揺るがなかった。
前者はメディアを用い、後者は同等以上の武力を用い、迅速かつ的確に抑えられていった。

あの爆発事故は、その完璧にヒビを入れた最初の事件だった。

盤石の象徴たるエーラニ、その本社に何者かが襲撃を掛け、爆発までもを引き起こした。
エーラニに対して良い感情を持っていなかった人間にとって、それは唯一無二の好機に映った。


――あのエーラニとて完全ではない。

――むしろ手広い管理運営のせいで、細かい部分が疎かになっている。

――先日の本社襲撃事件を見れば解るだろう。
   彼らは自分達の中枢に侵入されたばかりでなく、内部を吹き飛ばされもしている。

――このままでは、過去の過ちを繰り返すだけではないだろうか。


メディアを通じ、彼らはエーラニに対する人々の信心を崩し始めた。
真実がどうかなどよりも、人々の不安を煽ることに意味を求めた。

幸いと言うべきか、外部からの批判はない。
何せVIPという都市以外、人がいるコミュニティが存在しないのだ。
外からつけ狙われることのない今の時代、多少の無茶が横行するのも仕方のない話だった。

149 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:11:41.53 ID:qeyJIutV0
活動の中心となっていたのは、世界が滅ぶ以前に『貴族』などと呼ばれていた者達である。
都市の片隅で不自由なく暮らしていたはずの彼らが、エーラニに反旗を翻したのには理由があった。


それを一言で言うならば、『復讐』である。


怨恨の始まりは、VIPという都市が生まれる以前に遡る。
悪化した環境や『白い災厄』による破壊から逃げ延びた人々は、
生き永らえることに必死になった結果、いつの間にか国や人種、それによる優劣などという概念を忘れてしまっていた。

皆で助け合い、支え合い、安息の地を求めて移動する様は、ある意味で美しい光景とも言える。
しかしその中で、自分達を導いてくれる存在を求めていたのも事実だった。

そこに台頭したのが、逃げ延びた人類に混じっていた貴族達である。
彼らは、もはやあって無いような権威を振りかざし、迷える人々を先導しようとした。
だが、そのやり方は決して平等とは言えず、人類は余計に疲弊していくこととなる。

やがて、堪忍袋の緒が切れたかのように、それを良しとしない人々が立ち上がった。
とある国の一企業に過ぎなかった、後のエーラニと呼ばれる組織である。

得意のメディア戦術や根回し、豊富な人材を駆使し、エーラニは貴族達から主導権を奪い取ることに成功した。
その後、張り子の権力を失った貴族達は、都市の片隅に設けられた特別居住区に押し込められることとなる。
(特別と称して一般人と隔離したのは、彼らのプライドの高さを知っていたが故の判断である)

こうしてVIPという都市が形成され、人々は安定した暮らしを得ることが出来た。
物資の不足や、外界からの危険に怯えながらも、政府企業『エーラニ』という支柱を頼りに。

152 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:14:18.00 ID:qeyJIutV0
しかし貴族達は諦めなていなかった。

人類を導くのは、古くからその立場にあった自分達である、と。
力も、人心掌握のやり方も、そして平等という精神すら劣っていた彼らは、
それでも他者を見下すことに固執した。

そして、あの日の爆発事故である。
貴族達はエーラニの信用失墜を狙い、完全とまではいかないまでも成功する。

特に、エーラニ側から寝返る者達が出たのが大きかった。


元エーラニ代表者の一人であるフォックス。

同じくエーラニに所属していた職員の一部。

そして、幾名かの兵騎。


貴族と合流した彼らは改めて組織化し、堂々と表舞台へ上がった。
掲げる思想は『選ばれし者による清浄な管理を』――つまり貴族主義である。
政府企業エーラニと敵対するにあたり、彼らは名乗った。


――反企業組織『N.A.D.O.R(ナドラ)』、と。




154 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:16:28.18 ID:qeyJIutV0
今、都市VIPは内乱状態に等しい。
激しい戦闘こそ起きていないものの、それがいつ起きても仕方ないような状況だ。
更にナドラに影響を受け、水面下から浮上し始める弱小組織も出てくる始末である。

当然、人手が足りない。
その中で『傷つけたくない』というジョルジュ一人のワガママなど通るわけがなく、
直接手を掛けないまでも、彼が戦闘系任務に関わっているのは、そういう理由があった。
  _
( -∀-)「…………」

ナドラを名乗る組織が現れて、既に一年ほどが経つ。
兵騎としてその中を駆け抜けてきたジョルジュは、かなり疲弊していた。

身体ではなく、心が。
  _
( -∀-)「……ふぅ」

エーラニとナドラの争いは、いつ終わるのだろうか。
いや、そもそも終わりなどあるのだろうか。
自分は、このままで良いのだろうか。


……その全てに、答えは出せていない。



156 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:18:31.59 ID:qeyJIutV0
ジョルジュのいる部屋から出たイヨウは、夜の通路に見知った顔を見つけた。

(=゚ω゚)ノ「お?」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、イヨウさん」

ジョルジュと同じく、ミセリもイヨウの部下となっていた。
チームの中では情報を担当しており、ジョルジュやイヨウのサポートを行ってくれている。
先のセントジョーンズ追跡も、彼女の力があったからこそ出来たことだ。

(=゚ω゚)ノ「おう、ミセリちゃんじゃねーの。 お疲れィ」

ミセ*゚ー゚)リ「お疲れ様です」

律義に頭を軽く下げる。
若い子はこういうところが可愛いよなぁ、などと思っていると、

ミセ*゚ー゚)リ「……あの、ジョルジュ君は?」

159 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:20:34.74 ID:qeyJIutV0
(=゚ω゚)ノ「あー……待機室だけんども……」

ミセ*゚ー゚)リ「また引き篭もってるんですか?」

(=゚ω゚)ノ「ストレートに言ってくれるねぇミセリちゃん。
     せっかく俺っちがもっとオブラートに包んだ表現を探してたのによぅ」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、ではどうぞ」

するとイヨウは少し考え、

(=゚ω゚)ノ「……アイツ、まーた自分の殻に篭もっちまってよぅ」

ミセ;゚ー゚)リ「あれ? もっと酷くなってませんか!?」

(=゚ω゚)ノ「え? そーかい? どっちもどっちじゃね?
     まぁ、ともかくそういう感じだ。 お前さんに任せるよぅ」

ミセ*゚ー゚)リ「……ありがとうございます。 いつもいつも」

(=゚ω゚)ノ「良いってことよ。 若いモンの気持ちは若いモンにしか解らねーもんさぁ。
     特にオメェら幼馴染らしいから、そこんとこ含めて頼むよぅ」

頷いたミセリは、一礼してイヨウの横を通り抜ける。
背中に自動扉の音を聞きつつ、イヨウは通路を歩き出し、

(=゚ω゚)ノ(限界は近ぇ、か……?
     最近の若い奴にしちゃあシッカリしてンだが、それ故に脆いってわけかい)

162 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:28:22.12 ID:qeyJIutV0
他者の命を奪う。
間接的にとはいえ、あの誠実な若者がそれを実行しているのだ。
精神的なダメージは、こちらが思っている以上に大きいだろう。

もちろん暗殺や戦闘系の任務ばかりではない。
しかし比率としては確実に多くなっているし、兵騎の戦闘に対する特殊性から、
ジョルジュの意思を優先するわけにもいかなくなっている。

一部の兵騎がナドラ側に寝返ったのが痛い。
数が減るだけではなく、向こうから襲ってくる可能性も出てきたため、
今まで以上に警備と兵騎運用を徹底することを、エーラニは決定していた。

そんなことを、もう半年以上も続けている。
積み重なったダメージの総量は、もはや計り知れない。

(=゚ω゚)ノ(ホント惜しいもんだ……時期ってぇヤツが悪かったなぁ。
     もっと平和な時代に生まれたなら、こんな血生臭い分野じゃなく、
     全然別のことで活躍できたろーによぅ……まぁ、意味のねぇ同情だが)

どうにもならないことを思っても仕方ない。
イヨウが気になるのは、これからのことだった。

163 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:30:27.92 ID:qeyJIutV0
彼の経験上、ジョルジュがどうなっていくのかについて二つの推測がある。
それは、

(=゚ω゚)ノ(――長く続くか、短く終わるか。 どっちかだなぁ)

ここで折れるなら終わりだろうし、耐えるのなら続いていく。

前者であった場合、彼は戦いから離れるだろうが、正常に生きていくのは難しいだろう。
後者であった場合、戦場で命尽きるまで、二度と生死に迷いを抱くことはなくなるだろう。

どちらであっても地獄を見る。
確実にそうだとは言えないが、そうなる確率は高いはずだ。
そういう人間を、イヨウは少なからず見てきたのだから。

(=゚ω゚)ノ(ま、そこ辺は俺っちや他の大人が支えてやりゃいいか。
     なんだかんだで、アイツらにゃ生きていてほしいからよぅ……)

165 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:32:44.12 ID:qeyJIutV0
待機室には明かりが満ちていた。
ミセリが見たのは、その部屋のベンチに座るジョルジュの姿だ。
音と気配を感じたのか、彼はゆっくりとこちらへ顔を上げた。
  _
(  ∀ )

ミセ;゚ー゚)リ「――!」

一瞬、ミセリは電灯の存在を疑った。
それほどまでに、ジョルジュの顔に光という要素が見受けられなかった。
  _
( ゚∀゚)「……ミセリ」

しかし、それもすぐに元へ戻る。
瞬き一つする間に、ジョルジュの表情はいつもと変わらないものへと戻っていた。
疲労を満遍なく乗せ、それでいてこちらを気遣うような表情だ。

ミセ*゚ー゚)リ「ジョルジュ君、お疲れ様。 顔色悪いけど……大丈夫?」
  _
( ゚∀゚)「セントジョーンズって奴を追い詰めるまで走りっ放しだったからな。
     流石に疲れてるけど……うん、一晩寝れば大丈夫だと思う」

嘘だ、とは言わなかった。
一晩どころか何日休んでも、その表情が改善しないことをミセリは知っている。
それでも彼女は、少なくとも表向きは彼の思う通りに進ませたかった。
何故なら、


……彼をこうしてしまったのは、私だから。


168 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:46:49.01 ID:qeyJIutV0
決めたのはジョルジュかもしれない。
けれど、その背中を押したのは間違いなく自分だ。
仮に押さなくても、あの事故で彼がミセリを助けた事実は変わらない。

自分がいたから、今ジョルジュは苦しんでいる。
情報サポートとして彼を支えてきたが、そろそろ限界が目に見えてきた。

ミセ*゚ー゚)リ「あの、ジョルジュ君……」
  _
( ゚∀゚)「ん?」

告げる時が来たのかもしれない。
言えば、きっと身勝手な女だと思われるだろう。

それが嫌で、そして彼本人に決断して欲しいと願っていたが、
もはやそんな甘いことを言っていられる状況ではなくなってきている。
いや、もう手遅れかも――

一抹の不安が頭を過ぎるが、それを振り払うようにミセリは言った。

ミセ*゚ー゚)リ「ジョルジュ君……もう、止めよう?」
  _
( ゚∀゚)「え……」

170 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:49:01.92 ID:qeyJIutV0
ミセ*゚ー゚)リ「この一年、ずっと頑張ってきたけど……、
      ううん、頑張ったからこそ、もう終わりにして良いと思うの」
  _
( ゚∀゚)「それは……兵騎を、ってことか?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、それを含めて全部。 お金も溜まったでしょ?
      そろそろジョルジュ君は休むべきだと、私は思う」

嫌な女だな、と自覚しつつ、

ミセ*゚ー゚)リ「だから、止めよう? もう無理だと思う。
      これ以上続けたら、ジョルジュ君が壊れちゃうよ。
      私……、だって、私は――」

だが、ミセリは次のジョルジュの言葉に、己の誤りを知ることとなった。
  _
( ゚∀゚)「……悪ィ、それは出来ねぇ」

ミセ;゚ー゚)リ「え……?」

彼が何を言ったのか。
頭の中で反芻し、その意味を理解し、ミセリは目を見開いた。

ミセ;゚ー゚)リ「ど、どうして!? つらいんでしょう? 苦しいんでしょう!?
      だったら――!」
  _
( -∀-)「それでも出来ねぇ。 俺は、兵騎は止めない。
      ……まだ助けられる人がいるはずだから」

172 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:52:38.46 ID:qeyJIutV0
そう、ミセリは間違っていた。
ジョルジュは彼女の言葉に影響されはしたが、それを支柱にはしなかったのだ。
今の彼を動かしているのは、まだ見ぬ誰かを助ける、という不透明な意思なのである。

最初から、途中で止めるという選択肢はない。
止めてしまえば、助けられたかもしれない人を見捨てることになるのだから。

故に、ミセリの言葉は届かない。
彼にとっては起点だが、それ以外の何物でもない。
彼女の言葉が、ジョルジュの心に響くことはなかった。

ミセ;゚ー゚)リ「でも……それを、自分が傷付いてまで……!」
  _
( -∀-)「…………」

ある意味、遅かった。
ジョルジュは既に壊れている。
引き返せない、という意味で壊れてしまっているのだ。

ミセ*゚ー゚)リ「……でもそれは、誰かを殺すっていうことでもあるんでしょう?
      さっきのセントジョーンズさんみたいに」
  _
( ゚∀゚)「……っ」

ミセ*゚ー゚)リ「……ごめんね。 私、もう部屋に戻る」

もはや、ミセリに彼の心を変える術はない。
彼一人を置いて待機室を出る。

ただ沈黙が、そこに残った。

174 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:55:05.38 ID:qeyJIutV0
数日後、イヨウ達のチームに任務が下された。

内容は単純なもので、工業プラントを発つ物資車両をエーラニ本社まで護衛することである。

大して重要な物資ではないので襲撃の可能性は低く、
もしあったとしても小規模であることが予想されており、だからこそイヨウ達へ任された。
おそらくショボンの、ジョルジュを思っての采配なのだろう。

簡単なブリーフィングを終えたジョルジュ達は、準備を整え、その足で工業プラントへと向かった。

工業プラントは、都市VIPの四方に配置された内の西側にあるプラントだ。
数多くの工場が並び立つエリアで、VIPに流通している加工品のほとんどがここで作られてる。
日用品から機材、建材、更には武器や兵器と、その種類は多岐に渡る。

移動は、蜘蛛の巣のように張り巡らされた地下道を利用した。
それなりに都市自体が広く、各プラントも少し離れた位置にあるので、
到着した頃には太陽のシルエットは消え失せ、プラントは各所に設けられた電灯に照らされていた。


176 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:57:32.28 ID:qeyJIutV0
護衛対象は、連結した車両となってレールの上に乗っていた。
このレールの先に地下道へとの入口があり、そこから都市地下の目的地まで行けるのだという。

ジョルジュ達は一度、連結車両の一つに集まった。
普通なら移動時にプラントの人員が乗り込む車両だが、ここを簡易的な拠点にするらしい。
予定通り出発となった時、このまま一緒にエーラニへ向かう手筈となっている。

一度車両に落ち着いた三人は、己のやるべきことを確認していく。

(=゚ω゚)ノ「んじゃあ、出発前に打ち合わせた通りに頼むよぅ」
  _
( ゚∀゚)「ミセリと俺がここで、イヨウさんは周辺を見渡せる位置で待機。
    基本は工業プラントの警備員に任せて、異常があったら俺達が出張る、ですよね?」

(=゚ω゚)ノ「おう。 あと解ってるとは思うが、オメェは囮やら防衛に専念しろよぅ?
     殺るのは俺っちに任せとけってなぁ」
  _
( ゚∀゚)「……はい」

ミセ*゚ー゚)リ「…………」

(=゚ω゚)ノ「ま、あんま気張り過ぎンなよぅ」

そう言い、イヨウは自分の得物を肩に担いだ。
布に覆われた長棒にも見えるが、中身は狙撃専用のロングバレルを持つ長銃である。

ジョルジュが殺せない敵を、アレで代わりに殺してくれるのだ。

177 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:59:55.33 ID:qeyJIutV0
  _
( ゚∀゚)「…………」

ミセ*゚ー゚)リ「ジョルジュ君……?」

イヨウが出て行ってからも言葉を発さないジョルジュに、ミセリは問いかける。
  _
( -∀-)「……仕事を始めるぞ、ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ「……うん」

ノート型PCを開き、インカムを装着。
工業プラントの警備員達の報告は彼女に集まり、そしてジョルジュ達に伝えられる。
逆もまた然り、だ。

待機を命じられているジョルジュは、そのまま鉄の壁に背を預ける。
腕を組み、軽く俯き、そして口は硬く閉ざされる。

ミセ*゚ー゚)リ「…………」
  _
( -∀-)「…………」

181 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 00:02:24.14 ID:54TlWeA/0
ジョルジュ達が任務を開始した頃。
連結車両には物資が積載され、現場は細かなチェックと最終確認を残すのみとなっていた。

発進予定時刻まで残り十数分。
襲撃があるとすれば、この時間帯だろう。
自然と、連結車両周辺に緊張感が満ちていく。

(=゚ω゚)ノ「さぁて、面倒なことにならなきゃ良いが……」

イヨウが狙撃場所として選んだのは、現場から少し離れたコンテナ置き場だった。
積み上がったコンテナの山の一角、周りから多くの死角を得られる場所に寝そべり、
構えた狙撃銃のスコープで連結車両周辺を監視している。

それでも、車両周辺の全てを見通すことは出来ない。
護衛対象の車両があるのが一般用の発着場だからだ。

つまり他にも同じ形をした車両が並び、更にプラットホームもあるため、見通せる範囲が限定されているわけだ。

周囲に何もないのであれば車両の屋根で監視していれば良いのだが、
あれでは敵の接近を察知するのが難しくなるため、こうして一工夫重ねている。

もっとも、このやり方も完璧とは言えない。

他の車両があるため、どこを陣取っても死角が出来てしまう。
その中でおそらくベストであるのがこの場だろうと、イヨウが判断しているだけに過ぎない。
ここからなら、発車ギリギリまで監視し続けることが出来るはずだ、と。

(=゚ω゚)ノ(……この働きが無駄になるのを祈るぜぇ。
     敵を討ち取るのも大事だが、何もねぇ方が幸いってもんさぁ)

182 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 00:04:58.90 ID:54TlWeA/0
運搬する物資は、他プラント施設の増設や補修に使われると聞いている。

これが本当なら、襲撃によるメリットはないだろう。
もし物資を奪われたとしても、また同じものを運搬すれば良いだけの話だ。
コストが掛かる、時間のロス以外に、エーラニ側に大した損害は出ない。

だからと言って気を抜くことはしないが。
もしここで気を抜く奴がいれば、そいつは二流だとイヨウは考える。

(=゚ω゚)ノ(……常に最悪を想定してけ、ってなぁ。
     想像上ならどーなっても構わねぇしよぅ)

ちらりと時計を見る。
先ほどから二分しか経っていない。

(=゚ω゚)ノ(集中、集中、と……――ん?)

再びスコープを覗いたイヨウは、その視界の中で妙なものを見た。

護衛対象から少し離れた位置にある別の車両。
その影から、何か黒いものがはみ出ている。

(=゚ω゚)ノ(何だ、ありゃ? 影になっててよく見えねぇ……)

ここからの確認は不可能らしい。
まさか自分が離れるわけにもいかないので、誰かに任せるしかないだろう。
可能性は限りなく低いが、例えば爆発物であれば危険だ。

心の中で舌打ちしつつ、イヨウは通信機を手に取った。

183 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 00:07:16.16 ID:54TlWeA/0
キーボードを叩く音と、外からの作業音がしばらく続く最中。
再びジョルジュが言葉を発したのは、配置についたというイヨウの報告の直後だった。
  _
( ゚∀゚)「……ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ「ん?」
  _
( ゚∀゚)「この前は悪かったな。
     俺のこと心配してくれたのに、突っぱねたりして……」

思ってもみなかった台詞に、ミセリは少し呆然として、

ミセ;゚ー゚)リ「い、いいよ全然……気にしてないから。
      ジョルジュ君のやりたい通りにやれば、私はそれで良いと思う」
  _
( ゚∀゚)「……俺さ、あの後ちょっと色々考えたんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「何を……?」
  _
( ゚∀゚)「俺が兵騎を止めたら、助けられたかもしれない人を見捨てることになる。
     そう言ったけど――」

一息。
  _
( -∀-)「――俺がこのまま兵騎を続ければ、死ななくて良い人が死ぬかもしれねぇんだよな」

ミセ*゚ー゚)リ「…………」

イヨウの持つ狙撃銃を思い出す。
ジョルジュが本来殺すはずだった人間を、アレが代わりに殺してきた。

184 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 00:10:13.31 ID:54TlWeA/0
  _
( ゚∀゚)「俺が関わるだけで死ぬ人がいる。
     もちろん、いなくても別の人がその人を殺すだろうけど……」

言いたいことは解る。
それは、やはり空想論に過ぎない考えだ。
単に今までの『まだ見ぬ人を助ける』の逆バージョンなだけである。

プラスを得るためにマイナスを許容するか。
マイナスを得ないためにプラスを見捨てるか。

ただ、それだけのことだ。
人を傷付けることを厭う青年は、
  _
( ゚∀゚)「――俺、決めたよ」

果たして、そのロジックに始めから気付いていたのかもしれない。

ミセ*゚ー゚)リ「ジョルジュ君……?」
  _
( ゚∀゚)「フラフラしてばっかだけど、決めた。 また決めたよ。
     今度はブレねぇように――」

彼の言葉を遮るように、通信機が呼び出し音を発した。

185 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 00:12:33.96 ID:54TlWeA/0
車両の外へ出たジョルジュは、イヨウの言葉を聞きつつ走る。
空は真っ暗だが、等間隔に設置されている電灯のおかげで躓くことはない。

(=゚ω゚)ノ『爆発物だったらやべぇから慎重に頼むぜぇ』
  _
( ゚∀゚)「他の警備員の人達は?」

(=゚ω゚)ノ『真面目に警備中だぜぇ。 何も知らせてねぇよぅ。
     まずは怪しい物体の正体を見極めねーとな。
     現状、俺達の判断が最優先っつーことになってるからよぅ』
  _
( ゚∀゚)「了解です」

更に走る。
あまり音を立てないようにしているため、その速度は少し頼りない。
  _
( ゚∀゚)(この車両の先を、右だったな)

その前に一つ言っておきたいことがあった。
  _
( ゚∀゚)「イヨウさん」

(=゚ω゚)ノ『お? 何か見つけたかよぅ?』
  _
( ゚∀゚)「あ、いえ、違います……ちょっと言っておきたいことがありまして」

(=゚ω゚)ノ『あぁ? んなもん後にしろぃ』
  _
(;゚∀゚)「で、でも――」

187 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 00:14:41.77 ID:54TlWeA/0
尚も食い下がろうとするジョルジュに、

(=゚ω゚)ノ『――仕事中だぞオメェ。 忘れたかよぅ?』

微かな怒気を含んだイヨウの声が届く。
ここは諦めるしかないだろう。

(=゚ω゚)ノ『……これが終わったらいくらでも聞いてやらぁ。
     その後のことも含めて、なぁ』
  _
(;゚∀゚)「――! あ、ありがとうございます」

よく見ているというか、こちらが解りやす過ぎたのか。
出会った頃から思っていたが、自分は良い上司を得ることが出来たらしい。
幸いなことだ、と思いつつ、
  _
( ゚∀゚)(よし、ここを右へ――)

ジョルジュは、
  _
( ゚∀゚)「…………え?」

それを見た。

188 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 00:16:53.03 ID:54TlWeA/0
人だ。

イヨウの言っていた場所に、人がいる。
あぁ、なんだ、怪しい物体の正体は人だったのだ。


いや、

(=゚ω゚)ノ『おい? どーしたんだよぅ?』
  _
(;゚∀゚)「あ、あ……」

厳密に言えば、『人の形をした動かない物体』である。
それを何と呼ぶべきなのか頭で解っていても、心の方は認めることが出来なかった。
予想されて然るべきで、しかし予想していなかったモノ。


死体。


うつ伏せの状態で、それが転がっていた。

190 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 00:19:05.20 ID:54TlWeA/0
  _
(;゚∀゚)「イ、イヨウさん……! 誰か死んでる!」

(=゚ω゚)ノ『あぁ? おいおいマジか……とりあえず落ち着けぃ。
     誰だ? どうなってる?』

冷静なイヨウの催促に、ジョルジュは恐る恐るといった様子で死体に近付く。
薄明かりに照らされた死体を見て、
  _
(;゚∀゚)「警備員の人です……。
     目立った外傷は無し。 いや、首が折られてる……?」

(=゚ω゚)ノ『了解。 こりゃマジだな……ったく、何処のどいつだぁ?』

通信機越しにイヨウの呼吸が変わる。
狙撃手特有の、静かで機械的なものへと。

(=゚ω゚)ノ『……ジョルジュ、オメェはミセリんとこに戻って物資を守れ。
     どこに敵が潜んでるか解ンねーから気をつけろよぅ。
     下手人は俺っちに任せろィ』
  _
(;゚∀゚)「わ、解りました」

192 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 00:21:12.98 ID:54TlWeA/0
イヨウはその場に残り、敵を見つけ出して狙撃するつもりだろう。
それで終われば良いが、もし彼の目をすり抜けて連結車両に到達された時が厄介だ。
その場合、敵の相手はジョルジュが務めることとなる。

イヨウが失敗するとは思えないが、急がなければ。
死体を捨て置き、ジョルジュは元来た道を走り出す。
  _
(;゚∀゚)「……ミセリ!」

ミセ*゚ー゚)リ『ジョルジュ君? どうしたの?』
  _
(;゚∀゚)「警備員の一人が殺されてた! 今から戻るから、それまで警戒だ!
    他の警備員にも注意するように言っとけ!」

ミセ;゚ー゚)リ『え……あ、わ、解ったよ!』

ミセリが待機する車両まで、全速で走って数十秒だ。
つまり襲撃者も、場合によってはそのタイムで辿り着くことが出来る。
もちろんその前に見つかり、イヨウの狙撃を受けることを前提としたものだが、
  _
(;゚∀゚)「ッ!?」

ジョルジュの思考を掻き消す音が、夜の発着場に響いた。

射撃音。
高めに設定された火力のそれは、特有の響きを以って闇に溶ける。
ジョルジュは、それがイヨウの狙撃によるものだと知っていた。

193 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 00:23:29.54 ID:54TlWeA/0
音は一度だけで、夜の静寂が再び落ちてくる。
  _
(;゚∀゚)「…………イヨウさん?」

二発目がない。
それはつまり、一発で全て片付いたということだろうか。
だとするなら、
  _
(;゚∀゚)「……イ、イヨウさん……!?」

通信機から聞こえるはずだ。
片付けたぞ、という旨の報告が。
少しだけ適当な感じで、しかしこちらを安心させる彼の声が。
しかし、
  _
(;゚∀゚)「――――っ」

銃声は一度きり。
通信機からも声は聞こえない。

それらが意味することを想像してしまう前に、ジョルジュは走る速度を上げていた。
護衛対象の車両へ向かうのではなく、イヨウが狙撃場所として選んだコンテナ置場の方へ。
  _
(;゚∀゚)(くそっ、そんなことあり得てたまるか! あの人が簡単に……!)

これまでも危険な状況は数多くあった。
イヨウだけでなく、自分やミセリも命を落としそうになったことがあった。
今回も、それと状況は似たようなものだ。

ならば、どうしてこんなにもジョルジュの胸中はざわめいているのか。

201 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 01:00:54.97 ID:54TlWeA/0
コンテナ置場まで、更に数十秒を要した。

その間、再び銃声が響くことはなかった。
敵が初撃を避け、まだイヨウが狙撃を続けているというパターンは、これで潰れた。
  _
(;゚∀゚)「……ッ」

入口まで来た時、自分が何をやっているのかを頭の片隅で理解した。
通信機を手に取り、ミセリへ向けて、
  _
(;゚∀゚)「イヨウさんの様子を見てくる。 すぐに戻るから待ってろ」

返事を聞く必要はない。
懐へ通信機をしまい、ジョルジュは緊張した面持ちで、積載されたコンテナに近付いた。

妙な静けさが満ちている。
精神状態が不安定だから、そう感じるのか。
それとも、それが『事実』であるからなのか。

まだ敵が潜んでいるかもしれない、という考えは頭の中から消えていた。
自分でもよく解らない予感に背を押され、ジョルジュは静寂の中へと突き進む。

曲がりなりにも兵騎。
たとえ不意打ちを食らっても、兵騎の反射神経ならどうにかなる。
そういう思いが、どこかにあったのかもしれない。

202 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 01:03:31.28 ID:54TlWeA/0
  _
(;゚∀゚)「イヨウさん……!」

狙撃とは、高い位置を陣取るところから始まる。
それでいて周りに障害物があれば、逆に狙撃をされる危険性も減る。

その基本を頭に入れた上で、ジョルジュはイヨウが選んだ狙撃場所を見つけ出した。
  _
( ゚∀゚)「あ……」

果たして、そこに人影はあった。
狙撃体勢にあるのか、見覚えのある靴の先がコンテナの影から見える。

良かった。
無事だった。
あぁ、こんなことで慌てていたのでは、イヨウに怒鳴りつけられてしまう。
  _
(;゚∀゚)「ぶ、無事だったんですね……!
    勝手に持ち場を離れたのは謝りますけど、と、とにかく良かっ――」

どこか照れを隠しながら見たのは、
  _
( ゚∀゚)「――た」


(= ω )ノ


首を歪に捻じ曲げた、人の形を持つ何かであった。


203 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 01:06:05.55 ID:54TlWeA/0
  _
(;゚∀゚)「ぁ、ああ……う、……ひっ……」

何だこれは。
人形みたいなナニカ。
どうして首がそっちを向いている。
それでは生きていられないじゃないか。
早く、早く元に戻して、いや、しかしこれはもう、だって首が――……


ぶつり、と思考の糸が切れたような音を、ジョルジュは確かに聞いた。


  _
(;゚∀゚)「――――うわあああああああああああ!!!?」



腰が抜け、その場に倒れてしまうのを何とか堪える。
膝が完全に笑ってしまって、上手く立つことが出来ない。
何だ、何がどうなって、いや、これは、夢、ではなく、現実――

206 名前: ◆BYUt189CYA [>>204 訂正] 投稿日:2010/03/08(月) 01:12:25.71 ID:54TlWeA/0
  _
(;゚∀゚)「!!」

待て。
これをやったのは誰だ。
まさか自分で自分の首を折るなど不可能である。


……これをやった奴は、今どこにいる!?


反射的に背後を見た。
誰もいない。

それどころか周囲に人の気配がない。
今のジョルジュなら、素人でも殺せるほどに隙だらけなのだが。
ここで襲ってこないとするなら、
  _
(;゚∀゚)「あ、ぁあ……!?」

駆け出す。
足に力が入らないが、それでも走る。


いつからだ?

いつから、ミセリの返事が来なくなっている――!?


二度目の悲鳴が響いたのは、それから少し経ってからだった。

207 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 01:16:26.85 ID:54TlWeA/0
敢えて責任を追及するのなら、果たして誰が悪いと言えるのだろうか。

この襲撃を予想出来なかったエーラニが悪いのか。
心のどこかで、やはり襲撃の確率は低いと思っていたイヨウが悪いのか。
真っ直ぐミセリの元へ戻っていれば良かったのに、それをしなかったジョルジュが悪いのか。

おそらく、その全ての責任だ。
もしこの結末を先に予想出来ていれば、直すべき点は山ほどあっただろう。

しかし、敢えて犯人を挙げるのなら――
  _
(  ∀ )「誰が……」

ジョルジュの腕には、力なく抱かれる女性が一人。
かつては『ミセリ』と呼ばれ続けた、彼にとって大事な幼馴染だった。
あり得ぬ方へ首を曲げられ、もはや動くことはしないのだが。
  _
(#;∀;)「誰が、こんな……誰がっ……!!」

答える声はない。
周囲、襲撃を知った警備員が焦りのまま動き回っている。
誰もジョルジュの声に耳を傾けていない。

208 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 01:19:47.40 ID:54TlWeA/0
それでも、ジョルジュは絞り出すように叫ぶ。
  _
(#;∀;)「誰だ……誰がやった!? 出てこいよ!!
     今度は俺の番なんだろう!? だったら今すぐ俺と戦え!!」

ミセリを抱えたまま、周囲を睨みつけ、叫び続ける。

ジョルジュは気付かない。
その声に、既に応える動きがあったということに。
それが、もはや傍まで忍び寄っているということに。
  _
(#;∀;)「出てk――ッ!?」

ジョルジュの声を止めたのは、背後から絡められた腕だった。
筋肉質のそれは、彼の喉を的確に捉え、そのまま締め上げる。
  _
(#;∀;)「がっ……ぐっぎ……!!」

(   )「――――」
  _
(# ∀ )「お、まぇ"が……、っこ……!?」

(   )「恨めよ……それが正しいのだから」

その言葉を耳にした次の瞬間。
更なる力が込められ、ジョルジュの首から鳴ってはいけない音が響いた。

身体の感覚が一瞬で失せ、何も見えず、何も聞こえなくなる。

そのままジョルジュの意識は、二度と戻ってはこれない闇へと落下していった。

210 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 01:24:28.17 ID:54TlWeA/0
ジョルジュの身体から完全に力が消える。
そのまま地面に、糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちた。


( ゚ | ゚)「…………」


立っているのは、仮面の男。
酷く薄汚れた黒コートに身を包み、その場に立っている。
目線は、おそらくジョルジュを見ており、そして何も言わない。

そこでようやく、警備員の一人が男の姿を発見した。

一気に周囲が騒がしくなる。
仮面の男は、それを一瞥し、

( ゚ | ゚)「――――!」

跳躍。
車両の上に着地し、再び跳躍。
物資には手をつけず、そのまま闇の中へと消えていく。

あとには、合計して四つの死体が残るのみだった。

212 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2010/03/08(月) 01:26:58.92 ID:54TlWeA/0
『……見せてもらったよ、君の意志を』

『――――』

『エーラニから派遣された護衛チームを全滅させる手際、見事だった。
 我々は、同志となる資格を十分に有していることを認めよう』

『――――』

『――ようこそ反企業組織「N.A.D.O.R(ナドラ)」へ。
 我々は君を歓迎する。 そして共に戦おう。 「選ばれた者による清浄な管理」のために』

『――――』

『さて、早速だが……二日後に全員揃っての会議を行うことになっている。
 同志となった君にも出席してほしい。 詳しいことは後で通達する。
 そこで改めて君を歓迎するつもりだ』

『――――』

『……君が何を思って我々と接触したのか、それを語る必要はない。
 どうせ皆、似たようなものなのだ。 だが、一つだけ――』

『――――』

『――もう戻れないよ。 君も、我々も。
 これだけが我々の共通項だ。 心しておくと良い……』

『――――』
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

Designed by yukihirotsutsumi (template: gingami2cL)

Powered by FC2 Blog

FC2Ad

Copyright © うかり◆2rPWxrbSIg All Rights Reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。